キャリアの羅針盤(ミッション・ビジョン)を作るには、壁打ち相手となる「メンター」が不可欠です。しかし、日本の医療現場ではまだ「メンター制度」が十分に根付いておらず、「どうやって見つければいいのかわからない」という声が後を絶ちません。

第3回は、J-TOPメンターの下村昭彦先生が実践している、**「孤立しないためのメンター活用術」**です。インタビューで語られた内容は、教科書的な理論ではなく、非常に泥臭く実践的なものでした。

■ 「なってください」と言わなくていい

メンターが必要だとわかっていても、自分から目上の人に「メンターになってください」とお願いするのは、まるでプロポーズのようなハードルの高さがあります。

下村先生は、この点について笑いながらこうアドバイスしてくれました。 「いきなり『メンターになってください』なんて言ったら、相手は面食らっちゃいますよ」

確かに、言われた相手も「メンター? 何をすればいいの? 責任重大だな」と身構えてしまうでしょう。契約を迫るような言い方は、日本では逆効果になりかねません。 「そうではなく、**『進路について悩みがあるんです』『少し相談に乗っていただけませんか』**から始めればいいんです」

これなら、明日にでも誰かに声をかけられるはずです。その「相談」の積み重ねが、結果としてメンター・メンティーという信頼関係を作っていきます。

■ 孤立を防ぐ「3人のメンター」戦略

さらに下村先生は、**「3人の異なる立場のメンターを持つこと」**を推奨しています。

1. 同施設の先輩(直属の上司以外) ここがポイントです。「直属の上司」は、あなたの評価者でもあるため、弱みを見せたりキャリアの迷いを相談したりしにくい相手です。 下村先生は「同じ職種でなくてもいい」と言います。例えば、あなたが薬剤師なら、同じチームの「医師」をメンター的に相談相手にしてもいいのです。 むしろその方が、「臨床医から見てどう思うか」という客観的な意見が得られ、視野が広がります。

2. 同業界の他施設の人 自分の病院では「常識」とされていることが、外の世界では「非常識」かもしれません。井の中の蛙にならないために、他施設の視点を持つことは不可欠です。J-TOPのような外部のコミュニティに参加する最大のメリットはここにあります。

3. 全くの異業種の人 医療という枠組みを超えて、人生を俯瞰で見てくれる人です。 下村先生の場合、医学生になる前の**「大学教養時代の恩師」**などがこれに当たるそうです。最近は頻繁に相談するわけではないそうですが、医療の論理とは全く違う視点を持つ存在は、キャリアの節目で大きな支えになります。

一人の完璧な師匠を探す必要はありません。視点の違う3人に「相談」することで、自分ひとりでは気づけなかった「自分の強み」が立体的に見えてきます。

(第4回へ続く)